単独の者は脇目も振らずに正面だけを見つめ、足早に歩いた。 集団の者はその仲間内でのみ会話していた。 往来を歩く人々は、それぞれが個々に強固な縄張りを持っているようだった。 まるで卵の中で生活する稚魚のようにも見えた。 世界が明るく賑やかになるにつれ、人は輝きを失っていくような気がした。 文明の発展とは奇妙だと感じた。 同時に気兼ねなく人の世に降り立てたことにホッとした。