数十年前、そこはアミューズメント施設が一体となった人気の温泉ホテルだった。 建物の上方に『ボウリング、カラオケ、温泉』と書かれた薄汚い垂れ幕がかかり、今も気怠そうに揺れていた。 手前の駐車場を突っ切る。古いアスファルトは亀裂が入り、雑草や青竹の芽がそこから伸びていた。 六階建の朽ちた施設は、窓ガラスの幾つかが抜け、中央を貫くように大きな亀裂が一本入っていた。 幽霊屋敷。 そんな言葉がピッタリ当てはまる様相だった。