太古の昔、この地方の村を曾家という貴族が収めておりました。



 その頃村の土地は痩せていて、穀物や作物は育ちにくく、専ら川で取れる魚や貝が人々の生活基盤でした。

 しかしながら、地域には雨も多く、川はしばしば氾濫を起こし人々の命を無残に奪ったのです。



 そこで年に一度、荒ぶる川の神を敬い鎮める、大漁追福の祭りが行われました。

 祓いや清めの儀式は曾家一族が担いました。


 古来、加持祈祷を生業とし繁栄した曾家は、満月の夜に生まれた男児を祈祷師とする習わしが続いておりました。

 男児は齢四つになると隔離部屋に入り、徹底して人との接触を断たれます。

 そうして祈祷師になる鍛錬をしながら一生を過ごすのです。



 外出は祭事のみ許され、極端に日の光を浴びぬ生活が祈祷師の肌を際立って白くし、暗闇に慣らされた眼光は鋭く、人ならぬ雰囲気を醸すようになりました。



 得られた霊的な力の代償として、彼らは総じて短命でもありました。