…いやいやいや。
普通に考えてする訳ないじゃん。
もちろん断わるよ。
そして、私が「―…あの……」と勇気を出して言ったのに。
目の前の男の子は嬉しそうな笑顔を浮かべてる。
「楽しみだなー…瑛未ちゃんとデートすんの♪」
なんて勝手に期待までされて、断らせない雰囲気まで作られてしまった。
「…だから…あの…っ」
「じゃーもう帰ろっかな!瑛未ちゃん、じゃね♪」
「えぇっ…あ、あの…」
途切れながらも断ろうとする私の言葉を最後まで聞かないで、その人は行ってしまった。
目の前で、教室のドアが閉まっていく。
あーあ…言葉も出ないってこういうことなんだろうな。
私の場合はヘタレだから、言葉が出ないんだけど。
「…おい、夏生!」
後ろ姿に声をかけるけど、振り向かない夏生くんに呆れた様子の高橋くん。
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