「──そうか。分かった。気をつけて帰れよ」

「……」

引き止めてくれないことに、ますます寂しさが広がっていく。

貴広の方を振り返ることも出来ず、玄関で靴を履くと無言でドアを開けた。

外に出ると冷たい風が吹き抜けていく。

そして、あたしの目頭は徐々に熱くなっていき涙が溢れていた。

──こんなに悲しい気持ちで貴広の自宅から帰るのは始めてのことだった。