「──このソファーには座りたくない」

「もえ…」

「っていうか、この部屋には住みたくない」

嫌だ嫌だ嫌だ。

かおりちゃんが元カノでこの部屋で過ごしたことがある。

そんな過去なら仕方ない。

でも、この部屋で彼女でもないのにキスまでしたなんて…。

どうしても許せない。納得いかない。

そんなことを知ってしまった以上、ここで貴広と楽しく暮らせない。

あたしはスタスタと玄関の方へ向かって歩き出していた。

「もえ、待てよ」

貴広があたしの腕を掴んだ。

「ごめん。今日は帰るね」

「じゃあオレも行くよ。泊まり来てもいいか?」

「来なくていいから。1人になりたいの」

冷たく言い放つと、貴広は掴んでいた腕を離した。

あまりにもあっさりで、今度は寂しさが込み上げてくる。

矛盾だらけのあたしの心。