「……教科書、ねぇ……」 ポツリと低くかすれた声が聞こえてきた。 どうやら彼は、教科書を持っていないらしい。 「ふふっ」 何だか彼らしい。 期待を裏切らないところがいいなぁと、小さく笑ってしまった。 すると、切れ長の目がこちらに。 ジロッと背筋が凍るほどの視線が向けられた。 少し怖かったけど、 初めて彼と目が合って、少し嬉しかった。