「ていうか。先輩のこの成績なら、パラリーガルどころか弁護士自体目指せると思うんですけど」

「ううん。それはいいや」



きっぱりと迷いなくそう言った彼女に、俺は少しだけ面食らう。

春日先輩は肩越しにこちらを振り向くと、にっこり笑みを浮かべた。



「だってあたしは、ただアオイくんのお手伝いがしたいだけだもん」

「──、」



あー、テストの結果もわかったし今日はいい天気だし、なんか気ー抜けちゃうなあ。

言うだけ言って先輩は、大きく伸びをしてからこてんと後ろにひっくり返った。

その拍子に少しだけスカートのすそが捲れて、白い太ももがさらされる。

目に入ったその光景に、俺は思わず眉を寄せた。


……いつだって、そうだ。

先輩は、俺のことを安全パイなただの後輩だと思ってるのかもしれないけど。

本当は表向きの貞操を必死に保っているだけで、彼女の言動にどうしようもなく、心を揺さぶられている。



《先輩が成績伸びたら、俺もうれしいから。だから、勉強がんばって》



……あのときだって。

先輩といると、心を乱されるから。自分が自分じゃ、なくなってしまいそうになるから。

だから突き放すまではせずに、ちょっとだけ、勉強の方に集中しててもらおうと思ってたのに。


だけど先輩は、俺の将来の夢の手伝いをしたいって。

そんなこと言われたら、もう、たまんないじゃないすか。