「……来たよ~! アオイくん、今日もがんばってるねえ」



心の中の何とも言えないもやもやを表に出さないよう、あたしは努めて明るい声でアオイくんに話しかけた。

彼はその場から動かないまま、そばに来たあたしを迎える。



「……先輩、勉強は?」



こちらを見下ろしながら、やっぱり表情を変えずにアオイくんがそう言った。

その視線から逃れるように、あたしはわざとらしく「よいしょ、」なんて言いながら、彼に背中を向けたままで射場のふちに腰かける。



「だいじょーぶだいじょーぶ。ちゃんとがんばるもん」

「ふーん……」



ひとことだけ呟いて、アオイくんがすとんとその場に腰をおろした。

相変わらず、綺麗な正座をしているんだろうなあ。……そうは思っても、あたしはなぜだか、彼のことを直視できなくて。

ふう、とアオイくんがついた吐息にさえも、なぜか過剰に反応してしまう。