「ねぇ、空ってなんで青いんだっけ?」



ある日の放課後。

教室の窓を全開にし、そのサッシ部分に寄りかかって快晴の空を見上げながら、あたしはぼんやりと呟いた。

一応これは、ひとりごとじゃない。さっきから傍らで読書に没頭しっぱなしの、友人に宛てた言葉だ。

問いかけを受け、窓を背にした椅子に腰かけていた杏子(きょうこ)が、あくまで手元の小難しそうな本から視線を上げないまま答える。



「光っていうのは波長によって、色が違うでしょ? そして太陽光は、波長の違ういろんな色の光からできてる。この太陽光が地球の大気圏に入って空気中のチリにぶつかったとき、波長の短いものほどぶつかる確率が高くて、光が散らばりやすいの。つまり空が青く見えるのは、波長の短い青い色の光が、空いっぱいに散らばってるからよ」

「ふーん」



自分で訊いておきながら、気のない相づち。自覚しつつもそれだけを返し、窓からぷらぷらと右手をぶら下げた。

すると本の世界から戻って来たらしい杏子が、ようやく顔を上げてこちらを流し見る。

その表情には、明らかな呆れが含まれていて。