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理佳ちゃん


お見舞いに来たけど面会謝絶で会えなかったわ。
前にお稽古の時に話したわよね。
今度、一緒に演奏しましょうって。

モーツァルトの2台のピアノのためのソナタを。
 
当日、アメジストホールで待ってます。
元気になって、二人で演奏しましょう。


羽村冴香


*



「だから……」

「良かったな。
 羽村冴香と一緒に演奏できるクリスマスイヴなんて。

 だったら俺との約束は……
 26日にでもするか……クリスマス終わっちまうけど」



そんな言葉を紡ぎながらも、
心の中はぐちゃくぢゃ。


なんでLIVE入れたんだよ。
なんで羽村もクリスマスなんだよ。


そんなどうしようもない苛立ちが俺を包み込む。




「違うの。
 チケット……二枚あるから……。
 二枚あるから託実、一緒に来てくれない?」



理佳の思いがけない言葉に、
一瞬、思考回路が固まるものの……
再び、覗き込まれた理佳の顔を捉えながら
俺は流されるように頷いた。






隆雪の誕生日が……
こうなったら25日か26日だな。




そんなことを考えながら過ごす12月は、
いつもと違う景色を見せてくれる季節になった。