「…んっ」
ふいに塞がれた唇。
開けたばかりの目に飛び込んできたのは、龍ちゃんのアップ。
うわぁ…
懲りずに頼んでみるもんだねぇ。
本当にしてもらえるとは思わなかった。
やっぱり、これだよね。
「……ぁっ」
目を閉じて。
さらにキスを深めようと、龍ちゃんのほうに手を伸ばした…のに。
「……よし。起きたな?」
パッと唇を放して、
「ほら。さっさと行くぞ。」
龍ちゃんは、私の腕を掴んで車から引き出した。
もう、終わり?
甘い雰囲気は?
キスの余韻は?
……うーっ。
中途半端に煽らないでほしいんだけど。
「……何?」
不満をこめて睨んでみたものの、素知らぬ顔で車から“私以外の”荷物を取り出す龍ちゃん。
「別に…。」
悔しいから、私も素っ気なく返して…
龍ちゃんの手から自分の荷物をひったくって、さっさと歩き出した。
「おい、ナオ?」
ふんっ。振り返ってやるもんか。
龍ちゃんを置いて、そのまま部屋まで走る…つもりだったのに。
「……心配しなくても、
“つづき”は家でしてやるよ。」
ぽつりと呟かれた一言に、うっかり引き返してしまった。
……意志、弱すぎ?