「しかし由紀さん…っ!」 「ほら、また!章介さんはいつも“ですが”“しかし”しかおっしゃらないんですね!」 もう結構です!と。 由紀の、ふっくらとした唇は、泣き出すことを封じるように、震えた。 「由紀さん………私は…!」 「もう結構ですと言いました!」 突き放すように、小さく叫んだ由紀が、一歩近付いた章介の胸を、押す。 その手首を、自分のスーツの胸に押し抱くように抱えた章介は。 そうしたい訳じゃ、ないんです、と。 吐き出すように、呟いた。