「……冷たい」 ぼんやりと目を開けた雅が、至近距離の凱司の目に、驚く事なく緩やかに笑む。 ああ、寝ぼけているかも知れない。 「髪…冷たいですよ?」 「今、帰って来たからな」 指はもっと冷たいだろうと思いつつ、雅の前髪を梳き上げた。 露出した額に、唇を寄せる。 「遅くなった」 「…外、寒かったですか?」 唇も冷たい、と両手で凱司の頬を包む。 カチ。と。 雅の指先が触れた耳で、爪とピアスが、小さく音を立てた。