リングブーツを脱いでも、静かだった。 いや、リビングから、かすかに英語のイントネーションが漏れ聞こえる。 映画でも、見ているのかも知れない。 あと、わずか。 今日が終わるまで、あと10分。 凱司に、洋画の字幕は必要ない。 リビングのドアを開け、ソファでアザラシを抱えて眠る雅を見つけた頃。 テレビの中の女が、誕生石はアメジストなの、と媚びていた。