雅はそのまま、部屋から出て来なかった。 理由を訊いた凱司は、放っておくのが最善かと、部屋の前まで行きはしたものの、声は掛けなかった。 朝になり、それを少し後悔したのだけれども。 「………馬鹿ガキが」 「……………」 きゅ、と眉根を寄せたまま、鷹野が手渡したメモには。 『学校行ってきます』 と、丁寧に書いてあって。 しっかりと、朝食の準備はされていて。 「…何時に出たと…思う?」 「さぁな」 苛立ちの混じった、激しく困惑中、と顔に書かれた鷹野の低い声に、凱司もまた、ため息を重ねた。