夏の日暮れは遅いけれど、さすがにもう薄暗いような、時間。 雅はすっかり風邪をこじらせて、アルバイトどころか、学校も休んでいて。 朝、出掛ける時に計った熱は。 38度と少し。 いつもするキスを遮った手も、熱かった。 今日は、凱司は家に居るはずだから。 ひとりで寝ているわけではないし、必要なら病院にも行っているだろうとは思うけど。 なんとなく、繋ぐべき手を求めて落ち着かない右手を、持て余しながら。 仕事を終えた鷹野は、駅までの真っ直ぐな道を、ひとりで歩いていた。