~♪……

ふとピアノの音が止まる。



「ん~…誰か知らないケド、入ってくれば?」

…!気付かれてたか…

気付かれてたならしょうがない…

俺は教室の中に入って声の主と目をあわせる。



目の前にいるのは誰もが羨む美人。

ー!あっ、こいつ同じクラスの奴…



「はじめまして、成宮くん。成瀬です」

「あぁ…どうも」

「どうしたの?」

「先生に呼び出しくらったから来たんだけど、あいついなくて…」

「あーあのハゲなら職員室だよ、多分」

ハゲって…美人が言うと威力あるなぁ。



「ピアノ?」

「そう。今弾いてたのはベートーヴェンのピアノソナタ第14番〝月光″知ってる?」

「聞いたことある」

「有名だしね」

「……そ」



急に成瀬の顔が緩む。

「ぶっ…もうちょっと喋ってよ~」

どこがツボなのか分からないけど…成瀬は楽しそうに笑う。

「成宮くんって面白そう」

俺、怖そうとしか言われたことないし…



人懐っこい笑顔を見せる成瀬。




太陽に照らされた成瀬の横顔。









俺は初めて女の顔を綺麗だと思った。










「これからよろしくね」


そんな声が俺の耳に響いてくる。