莉都なんか目がうるうるして震えてるし。
いつも毅然としてる涼ですらなんだか少し表情が優れてないような……
「満月、気をつけろよ」
「はい?」
蒼介が真剣な顔で私に言った一言は、まるで戦地に向かう人に言う激励みたいに感じた。
………なんで?おかしくないかな。おかしいよね。
私ってそんな戦地に向かうのと同等な危険なことするつもりないんだけど。
でもみんなの顔を見回すと、涼も朱雀も莉都も同じ顔をしていて。
「私、太陽のお父さんに挨拶に行くだけだよね?」
それ以外に何もないよね……?
「満月、ナメとったらあかんで」
「何を?」
「太陽くんのお父さん……」
「めちゃくちゃ怖いんだよ」
………なんと。
みんなが怖がるぐらい怖い人ってどんな人だ。
「みんな、あんまり満月ちゃんを怖がらせたらダメだよ」
「でも涼くん……」
「ワシ、あの人苦手やわ……」
「同じく」
……ほんとにみんなその人のこと怖いんだ。
「まったく……まぁちょっと怖いかもしれないけど、きっと大丈夫だよ」
「みんなの反応見てからそんなこと言われても説得力ないよ、涼」
「……だよね」
苦笑をもらす涼も、太陽のお父さんは苦手らしい。
ますます怖くなってきてしまった。
「どうする?」
「うーん……行く」
ちょっと迷ったけど、やっぱり挨拶はした方がいいと思う。
というか、しないとダメでしょ。だってお世話になってるんだもんね。
最低限の礼儀として挨拶ぐらいはしっかりしないと。