「将軍、下へ降りたい」
こちらを振り返った将軍は、ややあってにこりと頷いた。
「どうぞ、御声をかけてやって下さいませ。励みになりましょう」
将軍は橋の上から下に呼び掛けた。
「皇太子殿下がお越しになる! お言葉を下さるぞ!」
湧いた歓声に、譎国の王太子を迎えた日のことを思い出した。
あの日と違って、彼らの声には本当の歓喜が混ざっていた。
歳の近い彼らの中には、自分のことを本当に神の子だと思っている者もいるかもしれない。
ちくりと胸が痛んだが、それ以上に、自分に向けて本心からの歓声を上げる人間がいることが、嬉しかった。
「将軍、木剣を貸してくれ」
橋を渡り、空堀へと階段を降りながら、崔延は言った。
「青礼と打ち合いたい」
顔を見なくても、将軍から表情が消えたのが分かる。
「……はっ」
将軍がたとえ止めようと、崔延の意思は固まっていた。



