振り返って膝をつくと、主が苦笑した気配が伝わってきた。 落ちてしまっていた夜着を拾って羽織り、主は礼の前に立って顔を上げさせた。 「外はどうだ?」 「竹桐(ちくとう)門が破られたようです。ここに来るのも時間の問題です」 「そうか」 何でもないことのように返事をして、主は礼を立たせた。 「今さら私は恐れない。城と共に死のう」 まっすぐ礼の目を見て、主はそう言う。 「お伴致します」 何度も繰り返したやり取り。 繰り返すたび、腹が座っていくようだ。