「うわっ!!なんだよお前!かかっちゃったじゃないか!」


「申し訳ありませんお客様。ですが、当店ではおさわりは禁止となっております」


「・・・なんなんだよお前!」


「僕ですか?このお店のオーナー兼社長をしております柳沢祐樹と申します」


「なんだよ・・・お偉いさんか!?だったら客にこんなことしていいと思ってんのか!この店なんてな、俺の力があればいつだって潰せるんだぞ!!」


「どうぞお好きなように。私は数名のお客様が笑顔になれる店を目指してますので。では、お引き取りください」



深々とお辞儀をする彼の姿は周りにいたキャバ嬢と客の目を惹いた。


周りの視線に圧倒されたのか、彼に圧倒されたのかは知らないけどその客はぶつぶつ言いながら店を出て行った。



「すみませんでした皆様!今宵も素敵な時を過ごしてください!」


その一言で周りの空気は一気に元に戻った。


「アンナちゃん。ちょっと裏来てくれる?」


にこっと優しい笑顔で私に語りかける彼。

私はこくりと頷き一緒に店の裏へ向かった。




裏へ来るとしんとしている。

今まで標的の彼に会えていなかったのは計画の中で予想外だったが、今奇跡が起きたと言ってもいい。

ようやく会えたのだ。

しっかりと観察しなければいけない。



「君最近入ってきてNo.2にまでなったそうだね」


「・・・はい。頑張ってます」


「何か夢でもあるの?」


「夢、ですか?一応」


「そっか、応援するよその夢。どんなのか教えてくれる?」


「・・・それはちょっと言えません」


「ああ。ごめんごめん。今日いきなり会った奴に聞かれても困るよね」


そう言いながら苦笑いをする彼の左手の薬指にはキラキラと指輪が輝いていた。