「そろそろ終わりの時間っすかね」


「そうね。ごめんなさいね、斗真君。全然楽しめなかったでしょう?」


「そんなことないです!・・・俺、やっぱ杏奈さんが好きだ」


「・・・」


「絶対俺の事好きだって言わせてみせるから」


「斗真君・・・」


「じゃあ、また連絡します!!」




私は斗真君と一緒に部屋を出て見送った。

消えていく彼の背中。


私は寂しさを覚えた。

今すぐにでも追いかけて抱きしめたい衝動にも駆られる。


でもそれを抑え店内へと戻っていった。



「お客を見送り?初めてじゃない?」


店長が声をかけてきた。

私は苦笑いで答える。


「もしかして好きになっちゃったとか?」


「そんな事ないです」


「でも、ここで働く子たちは大抵お客と恋に落ちて結婚して止めていくもんだけどね」


「・・・そんな恋もあるんですね」


「まぁすぐ離婚して戻ってくる娘もいるけど」







こんな所で働いてる女が幸せになれるなんて一握りだろう。


・・・ひと時の夢だと分かっているのに、なぜその夢を叶えようとするのか分からない。



「店長、今日はすみません。先に上がらせてください」


「え!?・・・よし、分かった。いいよ。あっはいお給料」


「ありがとうございます」


「いつも頑張ってくれてるから奮発しておいたよ」


私はぺこりと頭を下げ、奥の部屋で服を着替えてから店を出た。