最高学年になった私たちは忙しい日々を迎えていた。
デートとかする暇もなく、野球や進路に向けて精一杯だった。
でも学校でいる時間は大切にする。
お互いそう約束していた。
「あははっ涼介そのギャグ古いよ~笑」
「古くても面白かったらいいんだよ!!」
「あ、あれ新入生じゃない?」
「ん?あ!本当だ。さっそく野球部に勧誘するか!」
「気が早いって!」
「そうか?」
「ちゃんと学校でも決められてるでしょ!勧誘する日にち」
「あー、そうだな」
すっとすれ違った少しだけ目線の近い新入生の男の子。
さらさらの短いストレートの黒髪に、新しい制服。
そしてふわっと漂ってきた柑橘系の香り。
その匂いが私の鼻をつついた。
私は思わず振り返る。
「どうした?」
「あ、ううん。なんでもないの!いい香りがしたなーって」
「それ俺も思った。柑橘系だろ?」
「そうそう!私も香水新しいのにしようかなぁ」
「じゃあペアの香水にでもするか?」
「やったぁ!」
彼と出会うのはまだ先のお話。

