嬉しかった。

でも嬉しくなかった。


私はこの言葉を合図とする、そう決めているから。


プロポーズが復讐の合図。


なんて切ないのだろう。


彼と築いてきた日々はこの為だったのだ。



「ありがとう。すごくうれしい」


偽りの笑顔でプロポーズに答える私。


誠さんも照れ笑いをしていた。



出会って半年ほどしかたっていない。
けれど、誠さんは私を生涯の伴侶として迎えようとしているのだ。



しかし私はそんな彼を殺して、また落ちた生活を過ごす事になるのだろう。



誠さんが取りだした婚約指輪を私はその場で左手の薬指につけてもらった。



「これ、高そう」


「お金の事なんて心配する必要ないよ。・・・君の為ならお金だって捨てられる覚悟さ」


「大げさだよ」


「本当の事」



誠さんは私を優しく抱きしめキスをしてきた。


今までで一番優しいキス。


私はそっと目を閉じた。