「杏奈さんは・・・被害者ですし。もう詮索はしません!」


「え?」


「気になる事だけど・・・レディに詮索は禁物ですもんね!」



斗真君はオレンジジュースのストローを抜いて、一気飲みをした。


「あっそうだ。杏奈さん!これ」


そう言って取りだしたのは、
なぜかディズニーキャラクターの描かれたメモ帳。


「中に俺の電話番号とメアドとついでにLINEIDも書いときました」


「・・・」


「あっ別に卑しい気持ちがあるわけじゃなくて!何かあったときの為にって」


「ありがとう」


「い、いやぁ」



これ以上。

斗真君と一緒にいてはいけない。
頭の中のシグナルがそう伝えている。


今日会うのは二回目なのに
こんなにも心を許して笑ったりしてしまっている。


このままいくと
私の計画は全て無かった事になってしまう。


それが怖かった。



「これは、受け取れない」



私はバックの中から財布を取り出し1000円を取りだした。


「これ、コーヒー代」


「あっ・・・いや、俺が」


「お釣りいらないから。ありがとう。楽しかったわ」



私が立ちあがるのと同時に
アイスコーヒーの氷がカランと音を立てた。


そして斗真君を振り返る事なく私は喫茶店を後にした。