あたしは表情を変えることなく部屋の中へ入っていくと、忘れていった鞄に手をかけた。 「忘れ物、取りにきただけだから」 にこりともせずに、一言つぶやく。 二人とも何も言わない。 そのまま部屋を出ようと扉に手をかけたとき、 「香澄!!」 猛にぃに呼び止められた。 あたしは、一度回したドアノブを再度戻し、猛にぃたちへ振り返った。