「大丈夫ですか?奈々さん」



にこり、と笑う少女がいた。腰までのまっすぐに伸びた黒髪が風でふわり、と靡く。


「もう少し、“力”を増加させますね」



ピキピキとますます硬度を増していく氷の盾。
奈々はこの少女を知っていた。


「ありがとう、梓夕ちゃん」
「いえいえ。お気になさらず」


「梓夕ッ!!なんで奈々の味方になっているの!!」
「奈々さんの方が圧倒的に不利だから、です」



「奈々さん、梓夕。左から、炎が上がります。そちらの方にも氷を向けて下さい」
梓夕の後ろにはもう一人、腰までのダークブラウンの髪と瞳を持つ少女がいた。雛乃さんだ。
雛乃は、相手が思ったことを読み取れる妖、サトリ。
梓夕は、触った相手の力を増幅させる特殊能力を持っている。



雛乃に悟られ、奇襲が失敗した美々は悔しげに顔を歪めた。
「雛乃まで奈々の味方なの!?」
「えぇ。美々様。あなたはなぜ九蝶の長でありながら、弱いものいじめみたいなことをしているのですか」
「…ストレス発散よ」
「あら。そうでございましたか。では、私達が奈々様に加担いたしたら、もっとストレス発散になるでしょう。お手伝いいたしますわ」