家の前に車を付ければ、既に帰宅していた修が玄関前で待っていた。
「アル君っ!マリアっ!」
血相を変えて近付いて来る修を手で制し、マリアを抱いて車を降りる。
「マリア!?」
「眠っているだけだから、心配ないよ」
意識の無いマリアを見た修は顔を強張らせたが、俺の言葉を聞くとホッと息を吐く。
「取り敢えず、中に入って」
促されて中に入り、マリアのコートを脱がせて修に渡す。
マリアの部屋へ入れば、イギリスの家で愛用していたピンクラビットのルームシューズが見えた。
たった数ヶ月前の事なのに懐かしさを覚えながら、そっとマリアをベッドに寝かせた。
シーツに広がる、その色に。
寝顔を見て感じた違和感に顔を顰める。
ふぅ。と溜め息を吐いて部屋の中を見回せば、いかにも女の子が好きそうなインテリアで揃えられていて。
快適な生活を提供してくれている修に感謝だな。
未だに夢の世界にいるお姫様の寝顔を、もう一度見てから静かに扉を閉めた。