どうしたんだろう?


「───チッ……」


その瞳に何かを捉えたのか、舌打ちをした魁さんの眼光が鋭くなる。


「魁さん…?」


魁さんの視線を追おうとすれば


「───行くぞ」


再び手を引かれて歩き出した。

その後姿は、さっきまでの穏やかな空気を掻き消して、いつものピリピリしたオーラを纏っている。

さっきよりも足早に歩く魁さんに、何かあったのかと口を開こうとすれば


「───うぜぇ……」


ぼそりと呟いた、不機嫌な声。


───か、魁さんの機嫌が悪くなってる……


何で?

思考を巡らしている間にも、魁さんはどんどん混雑する駅の方に向かって進んでいた。


「撒くか……」


その言葉と同時に右手をグイッと引かれて、私の手を離れた魁さんの左手はそのまま私の腰を捕らえた。