コンコン


そして、その車の運転席の窓を叩く。

運転席にいる人が私に気づき、窓を開けた。




「遅かったな…1時間は待ったぞ」


そう言って、その人は口にくわえていたタバコを消した。




「来るなんて聞いてなかったもん。いっつも突然来るんだから…(汗)連絡くらいしてよ」

「アハハ、悪い悪い」


その人は、笑いながら車から降りてくる。


高そうな黒いスーツに、

清潔感のある髪型、

最近少し顔のシワが気になってきた…この人は……





「ところでどうしたの?今や有名化粧品の部長さんが、こんな夜更けに」

「その言い方やめろ(汗)娘に会いに来たっていいだろ」


その人は、苦笑いをして頭を掻いた。




このおじさんは、私のお父さん。

東京で働き、一人暮らしをしていて、こうやって時々会いに来てくれる。


両親は、私と茉莉がまだ幼い時に離婚して、私たちは母親に引き取られ、父は田舎から東京へ引っ越した。

離婚したあとも、頻繁に私たちに会いに来てくれたお父さん。

高校を卒業してから、私たちも東京に来たので、昔よりもお父さんに会えることが増えて嬉しい。