俺のこと好きになるの禁止だから!!

すると、彼は読んでいた本を閉じ、左手の手のひらを私の方へ向けた。



反射的に私は彼のその左手に触れた。



あったかい…



と、思っていると神野君が口を開いた。




「…違う。『お手』じゃない。」



「え!?」



突然の言葉に驚いて、慌てて手を引っ込めた。




「…秋野さぁ、見てわからない?」




すると、彼の向かい側には彼の荷物が置いてあった。



「そこ、座りなよ。」



左手で指さす神野君。
座席…とっておいてくれたんだ。



「あ、うん。ありがと。」



自分の行動に赤面しながら、あわてて自分の勉強の準備を始めた。


それにしても、神野君噂では女嫌いだから女の子にやさしくしないって思ってたのに場所取りしてくれてるなんてもしかしてやさしいのかな?


ふと、彼を見ると、目が合う。



「…何?」



「それは〜…えっと…。」



神野君の冷ややかな態度に、返事を躊躇してしまう。



「…まぁ、いいけど。で、何から勉強した方がいいの?」



あ、そういえばそうだ。
私は神野君と勉強をしにきたんだ。



「あの…、とりあえず全部かな。」



「…」




私の言葉にあきれ顔の神野君。
わかってますって私がバカなのは。



「お前、もしかして全部『向こう側』…か?」



うぅ…。結構危ないけど結構こっち側だよ。



「こ、今回は数学Ⅰだけだから大丈夫だよ!」




…。



…何だろう、他人から憐みを受けているこの感じは。