―その日の終礼後―



「な~に怖い顔してるの?さ、早く帰ろ!」



「うぅぅ、裏切り者~」



恨めしい顔でヒカリを見る私。



「まぁ~、あれは事故だね。事故。」



事故ですと!?



…うん、わかった!



なんて言えるもんか!!



「ヒカリ、演技できるじゃ~ん。変わってよ。」




「唯ちゃん、演技ってのはね、脇役が舞台を盛り上げるんだよ~。私は唯ちゃんのロメオを魅力的に見せるのに頑張るからさ~」



…ロメオじゃないし、ロミオだよ。



「うぅぅぅ・・・。そんなもんなのかなぁ?」



「そ!そんなもんだよ。」



ヒカリにうまく丸め込まれたような気がするけど…



「でも、ラッキーなんじゃない?」



「ラッキーって?」



私はヒカリの意地悪そうな顔を見て尋ねた。




「”幸運の王子様”とお近づきになれるかもよ。だって、唯ちゃん、ロミオで彼がジュリエットなんでしょ?」



そう、演劇には相手がいるんだ。



しかも、相手は女嫌いの”幸運の王子様”



「もしかしたら、勉強教えてもらえるかもよ?」



そうかもしれないけど…



でも、あの人怖いよ?



ほんと、どうしよう…。