散華の麗人

――まだ、一正が幼かった頃。
当時の一正は幼名である“八千代”の名で呼ばれていた。
まだ、一正が創った城はなく、本城にいた。
本城は広く、中には寺が建てられている。
陸羽は国王に就任しており、妻もいた。
『八千代。』
陸羽の妻が優しく呼ぶ。
八千代は父と母は既に争いの中で死んだ為、祖父母にあたる２人を頼って来た。
しかし、八千代があまりに幼い為、小姓として扱われている。
『御祖母様!!』
まるで、玩具を与えられた子供のような表情で八千代は走ってきた。
『これ！廊下を走るではありませぬ。』
『はいはい。』
陸羽の妻にやる気がない返事をした。
『リアンが来たようでありますよ。』
『そうか！』
八千代はそれを聞くなり、どたばたと玄関の方へ行った。

玄関へ行くと、少年がいた。
『お邪魔しま』
『山へ行こう!!リアン。』
『はぁ!?』
八千代は突拍子もないことを言いながら、リアンの横を走って行った。
『お待ちくださいませ!!』
『待つもんか!!』
八千代は楽しそうに山へ向かって走る。

やがて、山頂へ着いた。
高い山ではなかったが、幼い子供が大人も連れずに来るような場所ではない。
『楽しいな!!』
『それは……貴方だけです。』
リアンは息も絶え絶えに答えた。
体力がある八千代とは反対に、リアンは学力が高いが、体力は皆無に等しかった。
『で、帰り道はどこだ？』
『はぁ!?』
リアンは唖然とした。