感情を素直に出して泣くのは、久しぶりだ。
いつでも先に泣き出すのは美月だった。
私はそれを慰めて泣き止ませることが役目だったから。
「えっ、ちょっ、春陽!? なんで泣くんだよ!?」
誠人君は、急に泣き出した私に、あたふたと目に見えて狼狽していた。
恐々と、でも優しく頭を撫でて、背中をさすって「泣き止めよ、な?」と声をかけてくれる誠人君が好きで堪らない。
触れたかった腕に、これからは素直に触れられる。
抱き着きたかった胸の中に、飛び込むことだってできる。
見つめて、見つめられて。
キスして、キスされて。
抱きしめて、抱きしめられて。
好きだと言ったら、好きだと返ってくる。
そんな関係になれたんだと、思うだけで嬉しくて、嬉しくて。
「おっまえ、ホント、大人なんだか子供なんだかわかんねぇな」
誠人君が呟いた言葉も、優しさが滲んでていて全然不快にならない。
むしろ、そんな言葉さえも愛しく思えるんだから、両想いってすごい。
「俺以外の男の前で、無防備になるなよ」
ぎゅっと抱きしめられながら、耳元で囁かれた言葉。
私を独占したいと言ってるような言葉に、“あぁ、本当に誠人君私のこと好きでいてくれてるんだ”と安心したら、余計に涙が溢れた。
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