それから、僅かに潤む美海の瞳を、見つ
めた。
「……聞きたい」
そう言うと、僅かに跳ねた彼女の肩。
「……教えてくれるなら、聞きたい。ど
んなことでも」
俺に吐き出すことで、少しでも気休めに
なるのなら。
聞きたいんだ、どんなことでも。
───しかし。
「……っ調子のってんじゃないわよ、貧
弱男のくせに!」
美海から返ってきたのは、強烈すぎる右
ストレート。
う゛、と呻きながら痛みに身体を折る俺
を、美海はフン、と鼻を鳴らしながら見
下ろした。
「片手空いてるの、忘れてんじゃないわ
よ。徹は爪が甘いのよ」
との辛口評価。
……忘れてた、人間には両手あるんだっ
て事を。


