家に戻ると、美海が居なかった。
美海はここ最近、よく外出している。あ
れだけ最初は一人で出掛けるのを拒んで
いたくせに、今じゃきっと、俺がついて
いこうとしたら鬱陶しがるんだろう。
あの日の事は、俺も美海も触れない。
美海が触れてほしくないなら、触れない
。聞かない。
どうせ聞いてもきっと俺には救えない。
そんな勇気もない。
そんな自分が情けないのに……情けなく
て、たまらないのに。
俺はこの自分の性格を、治すことを恐れ
ている。
誰かに深入りするのが嫌だから。
美海に安易に触れて、美海が消えてしま
う事が酷く怖いから。
シャワーを浴びてから、リビングに行く
と、いつの間にか美海が帰ってきていて
、俺をチラッと一瞥した。
「……あ、お帰り……」
「服、早く着なさいよ」


