「そぉ?ごめんなさいね、ご迷惑おかけ
しちゃって。私も仕事があるし……もう
帰るわね」
「……はい、さようなら……」
俺は、上手く笑えただろうか。
俺を見上げていた美海のお母さんは、俺
の知っている"イイ人"の顔をしていた。
俺はずっとそんなおばさんが好きだった
筈なのに今、初めて……怖いと、思った
。
おばさんが見えなくなってから、未だに
しゃがみこむ美海の目の前まで歩き、俺
もしゃがみこむ。
「……美海……大丈夫?」
そう言うと、美海は首をふるふると横に
ふった。
「美海、たてる?」
そう訊いたけど、どうやら腰がぬけて、
足もぶるぶると震えていて、立てそうに
ないようだった。
「美海、乗って」
おんぶの体勢を取ってそう言うと、首に
、細い美海の腕が回ってきた。


