「……っ美海!」
バスケ部に入ってから、少しは体力のつ
いた俺は、あっという間に美海に追い付
くことが出来た。
俺がすぐ後方に迫っているのに気付き、
また逃げ出そうとした美海の腕を、後ろ
から掴む。
「……どこに行く気だよ。迷子になるだ
けだぞ……」
「……」
「美海───」
何をいってもこちらを向かない美海に、
半ば困り果てていた時。
「──あら、徹君」
久しく聞いていなかった、妙に耳に残る
声が聞こえてきて、思わず目を見開いて
しまった。
「おば、さん───……」
そこには、十年前からあまり変わってい
ない、美海のお母さんが立っていた。
ふと、美海の腕が震えているのに気づく
。


