もう何も見えない。
何も聴こえない。
───そんな、隔絶された世界に放り込
まれたような。
違う。本当は。
何も見たくないし、
何も……聞きたく、無いだけ。
目を固く瞑って、視界を謝絶して。
両耳を塞いで、ふざけた現実から逃げ出
した。
でも僅かに聞こえてくる、時計の針の音
。それすらも鬱陶しかった。
「───徹」
少し厳しい口調の、父さんの声が聞こえ
てくる。
だけど俺は依然、目を閉じたまま。
「徹、いい加減準備しなさい」
「……」
「そんな格好じゃ、葬式に出席できない
だろ」
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