「でも、迷惑じゃない?」
「武野さんに何かあった方が困る」
そう言うと、少し頬を染めた武野さん。
「……じゃあ、お願いします……」
うつむきがちにそう言った武野さんに頷
いて、上着を羽織った。
それから、家を出る前に、美海の方へと
振り向く。
「美海。美海ももう遅いし、危ないから
……今日は泊まっていくか、俺が帰るま
で待ってて」
「……泊まっていく」
「ん。わかった」
俺は少し美海に微笑んでから、武野さん
と家を出た。
街灯しかない道路は、あまりにひっそり
としていて、不気味だ。
怖がりな俺的には、今すぐにでも帰りた
い気分でいっぱいだった。ていうか武野
さんを一人で帰さなくて良かった。


