「……大きくなったなぁ、美海ちゃん」
そういいながら、美海の頭をふわりと撫
でた父さん。
そんな父さんに、照れ臭そうに、でもす
ごく嬉しそうに、美海は微笑んだ。
そんな微笑み、俺に見せてくれた事も無
いくせに。と膨れても意味がないし、別
に微笑んで欲しいわけでもない。
「博人さん、お久しぶりです」
「ああ、久しぶり」
やっと酔いが覚めてきたのか、リビング
で机を挟んで対峙し、和やかに対話する
二人。
因みに俺は、キッチンで簡単なつまみを
作りながらそんな二人の様子を見ていた
。
「東京には、観光に?」
「……ええ、まあ。それに、博人さんに
会いたかったので!」
「そうかぁ。嬉しいなぁ」
"ええ、まあ"の所に歯切れの悪さを感じ
たけど、父さんは別段気にもせず、それ
を問い詰めるつもりも無いようだった。