相変わらず一人で騒いでいる磯部からゆ
っくりと目を逸らして空一面に広がる桜
を見上げる。
……美海は、大丈夫だったのかな。
メールで聞けば良いんだけど、それすら
も何故か躊躇われて。
あのあと、俺らは何事もなかったかのよ
うに別れた。
きっとあのキスは、"そういう感情"での
キスじゃなかった。
お互いを支えるために、崩れてしまいそ
うな足元を、立て直すために。
きっと必要な、"儀式"だった。
───そう、思わないと……。
サアッ、と春風がふいて、俺の唇を撫で
ていく。
ふと、あのときの感触を思い出して、カ
アッと身体中が逆上せたように熱くなっ
て。
脈も早くなって、ドクドクと心臓が煩い
。
……儀式だって、思っていないとすぐに
、自分が崩れてしまう。