ただ唯一、どんなに冷たくしても、磯部
だけは諦めてくれなかったけど。
だけど最近、気付いたんだ。
失いたくないから手に入れない、とか、
関わらないっていうのはただ、逃げてい
るだけなんじゃないのか、って。
だって関わらないなんてそんなの──失
うも同然じゃんか。
だから……だから──。
失うのが怖いなら、失わぬように自分が
まもればいいんだ。
ふう、と息をついて、顔をあげる。
───もう、逃げない。
ポケットからケータイを出して、美海の
番号を表示する。
すこしドキドキしながら発信ボタンを押
せば、3コール目で電話に出た。
『……徹……?』
弱々しい、美海の声。


