【完】キセキ~君に恋した時間~






違う。違うんだ。……そんな言葉が、欲
しいんじゃないのに。



母さんの雪のように白い腕が伸びてきて
、俺の髪の毛に触れ、耳朶を撫で、頬を
包む。



ほんのりとまだ少し、温かい、だけど冷
たい、母さんの、掌。



『大好きよ……徹……無事で、よか……
った…』


『……っ!嫌だ……嫌だ!』



俺だって大好きだった。


優しくて、可愛らしくて、温かい母さん
が、大好きだった──……。



だけどもう。



二度と母さんの温もりに触れることは、
出来なかった。



それからだった。


俺が異常なまでに人との接触を避けるよ
うになったのは。



もう誰も失いたくなかった。



失うくらいなら、触れない。手に入れた
いと、願わない。