やっとのことで、何が起きたのか、少し 理解出来た頃にはもう遅かった。 『お、母さん……?』 ひゅうひゅうと、息苦しそうな音を出す お母さん。 血だらけの、お母さん。 足が車のタイヤに隠されてる、お母さん 。 『おかっ……、お母さん!』 『徹……』 『嫌だ……嫌だっ』 何が嫌なのかもわからないのに、ただそ う叫び続けた。 赤が消えない。止まらない。 温かかった母さんの温もりが、徐々に失 われていくのが、怖くて。 『……ごめん、ね…』 違う。ごめんは俺のセリフだったのに。