ああ、もどかしい。
美海が東京に居ないことがもどかしい。
俺が美海の傍に居ないことがもどかしい
。
今すぐ会いに行けないのが──もどかし
い。
「……美海……待ってて」
『……』
「すぐに、行くから」
俺はそう言うと、通話を切って、ポケッ
トに無造作にケータイを突っ込んだ。
「磯部、悪い」
「え?」
「ちょっと岩手行ってくる」
「岩手って……はぁ!?ちょ、徹!?」
ビックリしたように声をあげる磯部をお
いて、俺は家へと走った。
家についてから、父さんに置き手紙を用
意して、分厚いコートを羽織る。
それから、財布の中身を確認して、慌た
だしく家を出た。


