掴んだ美海の腕は、夏の頃よりもまた、
細くなっている気がした。



「徹、速い。あと、痛い」



中庭に着けば、たいして息切れもしてな
いのに、不機嫌そうにそう言った美海。



俺は慌てて手を離す。



「ごめ……──ていうか、なんで」


「私がどこにいようと、勝手でしょ。高
校の説明会とかを聞きに、来たの。明日
から冬休みだしね」



そう言った美海は変わっていなくて。



相変わらず凛としていて、俺にキスなん
て爆弾を落としたことすら、もう忘れて
いるんじゃないのかってくらいに。



なんでキスしたの──そんなこと、きけ
るわけもなくて。



俺はやっぱり、意気地無しだ。



「───モテモテ、なんだ」


「え?」



急にそう言われて顔を上げると、壁に背
を凭れていた美海が、クスッと笑った。