いやいや、こっち見てないし、気のせいだよね。
そのまま何も聞いてなかったかのごとく振る舞っていると、
「おい、無視すんなバカ」
鼻をムギュッとつままれ、ムスッとした奏多が目に入った。
「いだっ!
何よ~、もぉ~っ!!」
ちょっと……いや、かなり痛い鼻を押さえていると、
奏多が、ん゛と大袈裟に咳払いした。
「今日…終わるまで居ろよ。」
「はひ?」
「い、一緒に帰ってやるから、
最後まで居ろ!」
一緒に帰ってやるから…って…
なんでそんな上から目線!!?
「いや、いいんですけど。
一緒に帰りたいとか思ってないんですけど。」
「……」
「ホントはここにだって来たくなかったもん。
すぐ帰る。」
「帰んなよ」
「は…?」
「『他の女に負けないくらい全力で応援しろ』って言ったのに、お前全然応援してねーんだもん。
なのに勝手に帰るとかナシ。」