「お待たせ」
それから少しすると、バイトを終え、学校の制服に着替えた叶斗くんがやって来た。
ドキンと弾む心臓をなんとか落ち着かせながら、私は口を開く。
「…制服、まだ濡れてる?」
「ちょっとだけね。でも大丈夫だよ」
そう言ってニコリと笑う叶斗くんの姿に、ほっと安心する。
2人でファミレスの外へ出ると、やっぱりまだ雨は止んでいなかった。
ほんとにいつまで降るんだろう…。どんよりした真っ暗な空を見つめ、私は心の中で大きな溜め息をついた。
…と、傘立てから傘を取り出し、ぱっと傘を開く叶斗くん。
「じゃあ帰ろっか」
叶斗くんはそう言いながら、傘の半分を私に差し出し笑顔を浮かべた。
えっ…ちょっと待って。
1つの傘に、2人…?
えっ?えっと…。
あれっ?状況がうまく理解できない…。
呆然と立ち尽くす私を、不思議そうな顔で見る叶斗くん。
「夕芽さん?どうしたの…?」
「あっ…えっと…ううん!なんでもないよ」
必死で動揺を隠しながら、私は勢いで叶斗くんの隣に並んだ。
1つの傘に、2人……。
距離が…近い。
その距離の近さに、一気に心拍数が上がる。



